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プロローグ
修行の交渉は次のようなものだった。「味の伝授料200万円。その他すべて教えます」
ビジネスの世界に居た人間にとってはなんとも大ざっぱな内容、まあいわゆるFC(フランチャイズ)
の一種である。とにもかくにも、もう頭の中では出発してしまっている。

200万円
を高いと思うか、安いと思うかは自分次第である。いささか稚拙な契約書にサインした。
もう後戻りは出来ない。
東京に戻り早速店舗探しを始める。
明大前、笹塚、浦和、高円寺etc、、、とにかく駅に近い所が良い
のかなと、まったくのシロート考え。ずいぶん見て回ったつもり
だったが、今思えばたった10件目で阿佐ヶ谷の店を見つけた。
北口から徒歩3分、ラーメン屋の居ヌキである。

不動産屋の担当者によると「場所は最高ですよ。人通りも多いし駅に近い。何しろ前の人は
売り上げが良すぎてその分配でケンカになり店を閉めちゃったくらいだよ。お客さん列ぶよ!!」
ラーメン業界に燃える私はこの言葉を真に受けバラ色の行列店を夢見てしまった。
これから始まる
荒海への航海はこうしてスタートした。

つづく