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この夏、突然の雑誌休刊の話から始まった人生の転換期、そのリセットキーを押す頃、街行く人々
は皆、重いコートを羽織る季節になっていた。
思い起こせばこの数ヶ月、事務所の整理、社員の再就職先探し、店探しと瞬く間に過ぎてきた。
「ラーメン屋」になる目標に向かい一気につっ走ってきたけれ
ど、不思議なことに店が決まったとたん、それまでハイテン
ションだった私の心に
”不安”の一文字が小さく現れ、やがて
夜ともなると
”成功””失敗”のイメージが交互に脳裏を支
配し、いわゆる「眠れない夜」が続くようになってしまった。

カメラマンとしてデビューし、その後エディターとして音楽
月刊誌を立ち上げ、絶頂期のチェッカーズ、オフコース、ボウ
イ、アルフィー、サザン、ユーミンなどのアーチストを毎月追
いかけ、企画を考えていたこの10年の日々から
まったくの別世界。
アルバイトの経験もない飲食店のそれもラーメン屋のオヤジに
俺はなれるのだろうか、、、、  
読者に感動を与えるように今度はラーメンでお客様に感動していただく。
そう、基本は同じに違いない。きっと出来る。
  季節はもう年の瀬を迎えようとしていた。